リベラルアーツを学ぶ目的
これからは、“個人の力で生きる時代”だとよく言われます。自分軸の確立、人生のフィロソフィーの獲得こそ、この益々混迷を極める時代を生きる上での重要ファクターである事は明らかです。
この力を高めるヒントが、「リベラルアーツ」- ピンポイントで言えば「アート」・「西洋美術史」-にある事は、ようやく日本でも認知が進んできた様に思います。
「リベラルアーツ」がもたらす力とは、以下(1)~(3)のキーワードに包括されると言って良いでしょう;
(1) 人間力
(2) オンリーワンになれる知識やノウハウ
(3) グローバル コミュニケーション力
所謂「グローバル教養力」です。リベラルアーツとは、古代ギリシャ・ローマの時代からルネサンス期にかけて一般教養の基本となった7科を指しますが、現代のアメリカを中心とした大学の科目には、美術・歴史・文学・哲学・宗教学・社会学等が含まれます。古典をベースとしリベラルアーツ的知見を横断的に学ぶ事は、ビジネスに於いて未認知である問題の提起や直面する具体的事案への深考・解決を可能とし、ひいては我々の生きる活力を生み、最終的に豊かな「人間力」の獲得へと帰結します。
●古典に学ぶ意義
では、なぜ古典に学ぶのか・・・・それは「プライマリーソース(一次資料)」、要はオリジナルの情報だからです。例えば、美術史におけるプライマリーソースは、画家の手紙や手記、当時の批評家の美術評論文など、該当する時代に書かれたもののことを指します。何千年、何百年、あるいはたった数十年前であっても、淘汰の波をかいくぐり「ネット以前」より残っている“言葉”にはそれ相応の理由が存在します。激変していく世界の中で、溢れかえる玉石混淆の情報に翻弄されない為にも、私たちは普遍的な思想や先人たちの言葉を顧みる必要があります。プライマリーソースは裏切りません。
●リベラルアーツで培う「人間力」とは
リベラルアーツで培う「人間力」とは
私は、西洋美術史の講座で先人たちの言葉を度々引用します。とりわけルネサンス期のヒューマニスト及び建築家であったアルベルティ(1404~1472)が、自身の絵画論に書いた成功する画家の条件に対する主張は、現代にも通じる非常に興味深い参考資料の一片です;
「善良な人間であり、リベラルアーツに精通している人。画家の技術や専門性よりも、その人物の真っすぐな性格や優しさの方が、パトロンとなる人々の好意を得ることができる」。
画家に於ける重要な資質の基盤は人間性にある、とのこの見解は、当時の画家のみならず、現代のいかなる人物においても共通して求められる物でしょう。ビジネス、コミュニティ、友人、恋愛等、あらゆる関係性のステージにおいて、私たちは、一緒に過ごしていて気持ちの良い人を選びます。アルベルティが言うリベラルアーツに長けた人物とは、寛容性に富み、バランス感覚に優れ、フェアプレイヤーであり、精神的に自立し自分軸を持っている=「人間力」が豊かである人物であると私は思っています。真面目で誠実で心優しく、かつリベラルアーツに精通している人。何故そのような人に惹かれ、応援したくなるのか…それは、このような人との出会いは滅多にないからなのです。
●アートを「英語」で学ぶアドバンテージ
世界を舞台に活躍するために必要不可欠な「英語」で、リベラルアーツ-特に西洋美術史に親しむ事は、一歩進んだ力を得ることができます。その力とは「グローバルな視点」。アート作品を紐解き身に着けた美意識、西洋的な思考や視点を、異文化の言語「英語」で活用する事は、多角的な視野の獲得に繋がります。その力が、世界のビジネスパーソンたちと対等にコミュニケーションするための土台になるのです。